The Times 03/Jan/2009 Chancellor on brink of second bailout for banks
(日本語訳:2009年1月3日付ザ・タイムズ紙、財務大臣、銀行への第二次救済策の瀬戸際)(資料出所:2009年1月3日付ザ・タイムズ紙の一面)
このメッセージはビットコインが出来たときに、最初のブロックに刻まれたメッセージです。(ビットコインの取引を記録するブロックチェーンのブロックには任意のデータを入れることができるスペースがあり、ビットコインのブロックチェーンの最初のブロック(ジェネシス・ブロックと言います。)にこのメッセージが記録されました。
ビットコインが作られた背景には、今皆さんが毎日使っている日本円や米ドルのような「法定通貨」に対する批判があります。
例えば「日本銀行等の中央銀行が、日本円等の法定通貨をちゃんと管理できないのではないか?」という批判です。
2023年7月現在、日本銀行は、極端に利子を低く抑える「ゼロ金利政策」を続けていて、お金を銀行に貯金してもちっとも利子がたまりまないどころか、夜にATMを使うと時間外手数料を取られてしまい、お金を貯めるどころか、お金が減ってしまいます。
そして、ウクライナでの戦争が始まり、コロナ禍が終わった2022年後半から2023年に入り、物価が上昇してしまいました。さらに利子が低いままだったので、利子を上げていった米ドルに比べて魅力が無くなり、日本円が売られて、米ドルが買われました。結果として、2022年初には1米ドル=114円だった日本円は、1米ドル=140円前後まで下落しました。2割も対米ドルの価格が下落したのです。
米ドルについても、ちゃんと管理がされているかというと、2022年まではコロナ禍もあり、銀行の利子を低くしていました。アメリカ政府もコロナ対策で多額の資金を投入しました。結果として世の中に米ドルがあふれることになり、株式や不動産の価格が上がりました。そしてコロナ禍が終わったころから、一気にインフレーション(世の中の物の値段が上がること)が進んでしまいました。
世の中の物の値段が上がるということは、お金の価値が下がっていることですので、日本円にしても、米ドルにしても、お金を持っているだけではどんどんお金の価値が下がってしまいます。
今、ハワイに旅行をすると、1日数万円の費用がかかります。円安・ドル高に加えて、現地の物価高のダブルパンチで、日本人にとって、海外旅行は高いものになってしまいました。こんなに価値を下げてしまうような政策をとっている日本銀行を信頼できるのか?日本銀行は、銀行ばかり儲けさせて一般の人は苦しくなるばかりではないか、というのがビットコインを作ったサトシ・ナカモトの思いだったのかもしれません。
さらに、2008年の「リーマン・ショック」と呼ばれる金融危機によって、中央銀行や政府がお金をちゃんと管理できるという信頼が揺らぎました。この時期、多くの銀行がつぶれそうになり、政府はこれらの銀行を救済するために大量の資金を注ぎ込む(要は私が払った税金を投入する)必要がありました。これは多くの人々にとって公平でないと感じられ、金融システム全体への不信感を強めてしまいました。
このような背景からビットコインは、2009年に新しいお金の仕組みを作る、ということを目指して生まれました。ビットコインはインターネット上で取引され、中央銀行や政府に管理されず、全ての取引はインターネット上で公開されており透明性があります。