「ビットコイン」って何か知っていますか?デジタルのお金、というくらいは聞いたことがある人も結構いると思います。デジタルのお金であれば、普段使っているSuicaやPayPayと何が違うのでしょうか?
全然違います。ビットコインは、SuicaやPayPayのようなデジタルマネーとは全然別物です。ここではビットコインってそもそも何なの?何が特別なの?ということを分かりやすく説明します。
ビットコインとは何なのか?
ビットコインとは、お札やコインのような形のある「お金」とは違い、インターネット上にある、デジタルな形で存在するお金(仮想通貨)です。
2008年にサトシ・ナカモトという名前の謎の人物が、「ビットコイン:ピアツーピア電子キャッシュシステム」という論文で、ビットコインの仕組みを世の中に提案しました。そして、2009年1月にビットコインが誕生しました。
では、お札やコインが無いビットコインは「ブロックチェーン」の技術を使っています。ブロックチェーンとは何かについては、「ブロックチェーンって何?」で、分かりやすく説明しています。ここではブロックチェーンはインターネットにある、取引を記録する帳簿だと思ってください。
ビットコインは、インターネット上の帳簿であるブロックチェーンに、取引を記録します。この記録は、一か所に保存されているのではなく、全世界の多くのコンピューターで共有され、保管されています。
ビットコインの特徴
では、ビットコインは、普通のお金と何が違うのでしょうか。
1. 地球の裏側にいる人に瞬時に送金が可能
ビットコインはインターネットにつながったスマートフォンやパソコンさえあれば、誰でもウォレット(財布)を作ることができ、地球の裏側にいるウォレットを持った人にも瞬時に送金ができます。
送金には、銀行口座とかはいりません。銀行での送金手続きや、銀行の許可を待つことなく、直接取引が行えます。いつでも、どこでも、誰とでもビットコインを使って取引が可能なのです。このような利便性と自由度は、日本円や米ドルにはありません。
2. 管理者、コントロールする政府がいない
ビットコインの最大の特徴は、中央銀行や政府によって発行や管理されていないという点です。日本円やアメリカドルなどの通常の「法定通貨」は、各国の政府や中央銀行が管理しています。
日本では日本銀行が日本円を管理しています。イギリスの場合には、イングランド銀行がポンドを管理しています。アメリカの場合には、少し複雑で、FRB(連邦準備制度理事会)を中心とする連邦準備制度(FRBを最高意思決定機関とし、アメリカ内の12の連邦準備銀行などで構成される)が中央銀行の役割を果たしていて、米ドルを管理しています。
一方、ビットコインには、中央銀行のように、お金を管理する組織がありません。ビットコインは、インターネット上の帳簿であるブロックチェーンに、取引を記録します。この記録は、一か所に保存されているのではなく、全世界の多くのコンピューターで共有され、保管されています。さらに、ビットコインの発行や流通は一定のルールに基づいて自動的に行われます。
3. 発行されるお金の量が決まっている
日本円は、中央銀行の日本銀行が、円の発行量や流通量をコントロールしていますが、ビットコインの発行量はあらかじめプログラムで制限されていて、誰かが発行数を増やしたり減らしたりすることはできません。(詳細は「ビットコインの発行量と半減期」参照)
2009年のビットコイン誕生時から、ビットコインの最大発行枚数は約2,100万BTC(BTCはビットコインの取引単位。日本円の「円」のようなもの)と決まっています。ビットコインの発行量は、あらかじめ決められたスケジュールに沿って発行がされていて、政府が決める政策や、政治家や中央銀行が出す政策の影響を受けません。
これにより、ビットコインは法定通貨のシステムが抱える問題を解決しようとする試みと言えます。つまり、一般の人には不公平だと感じる銀行の救済策や、お金の価値を決める政策(利子を上げたり下げたりすること)の影響から自由であることを目指しています。
4. 個人情報は公開されない
ビットコインの取引はインターネット上で誰もが確認できますが、取引を行う人々の具体的な個人情報は公開されません。これにより、ビットコインを使う人のプライバシーが守られます。
今、日本で多額のお金を送金しようとする場合には銀行口座が必ず必要です。銀行には自分の名前から住所まで全部登録されているので、誰がその取引をやったのかは銀行には丸見えです。また最近は、銀行は、税務署・警察から問い合わせがあれば、取引の情報を税務署・警察に渡したりしています。預金残高や取引内容が見えてしまうという意味で、プライバシーが無いとも言えます。
5. ピア・ツー・ピア・ネットワーク
ビットコインは、一人一人のユーザー間で直接取引を行うことが可能なピアツーピア(P2P)ネットワーク上で動作します。ピア・ツー・ピア・ネットワークを言い換えると、「対等な参加者間のネットワーク」や「参加者同士の直接的なネットワーク」となります。これにより、第三者を介さずに金銭取引を行うことができます。
ピア・ツー・ピア・ネットワークは、クライアント・サーバー・モデルのネットワークと比較すると分かりやすいです。クライアント・サーバー・モデルの例としては、ウェブ・ブラウザ(クライアント)でウェブサイトを見る場合を考えてみます。
ウェブ・ブラウザで、ウェブサイトを見るときには、ウェブサイトの情報を持っているサーバーからデータを取ります。このように、サーバーはデータを提供し、クライアント(ウェブ・ブラウザ)はそれを受け取るという役割がはっきりしています。
クライアント・サーバー・モデルのイメージ
一方で、ピア・ツー・ピア・ネットワークでは、すべての参加者(ピア)が平等で、自分が持っている情報を、他の参加者(ピア)と直接共有します。つまり、参加者(ピア)はときにはデータの提供者(サーバーのような役割)となり、ときにはデータの受け取り手(クライアントのような役割)となります。そして、それぞれのピアが直接通信を行うため、中心的なサーバーがなくてもネットワークは機能します。
ピア・ツー・ピア(P2P)ネットワークのイメージ
このピア・ツー・ピアの方式は、ビットコインを分散型ネットワークにすることを可能にしています。中央のサーバーが攻撃を受けたり、故障したりしてもネットワーク全体がダウンすることはなく、また特定の人や企業が、ネットワークをコントロールすることもありません。
6. 全ての取引がインターネットで公開されていて、透明性が高い
全てのビットコイン取引は、インターネット上で公開されて、永続的に記録するためのシステムである「ブロックチェーン」に記録されているので、透明性が高い。(詳しくは「ブロックチェーンって何?」を見てください。)ビットコインの全ての取引は、BlockchairやBTC.comなどの、「エクスプローラー」と言われる検索サイトみたいなサイトで確認できます。
7. 採掘(マイニング)により取引認証がされるため、安全性が高い。
ビットコインの取引データを保存するブロックチェーンに新たな取引を追加するためには、「マイニング(採掘)」と呼ばれる計算を行う必要があります。この計算を解いたコンピューターには新しく生成されるビットコインや、ビットコインの送金の手数料の際に支払われた手数料としてのビットコインが報酬として与えられます。現在では、私たちを含めて、莫大なコンピューターの計算能力を投じているので、悪意のあるハッカーがビットコインの不正な取引をすることはほぼ不可能になっています。(詳しくは「ビットコインの採掘(マイニング)って何?」を見てください。)
8. 独自の取引単位「BTC」
ビットコインは「BTC」という独自のお金の単位を持っています。PayPayやSuicaは日本円を単位としているので、本当は「日本円を裏付けにしたデジタル・マネー」でしかなく、本当のデジタル・マネーではないとも言えます。
9. 小数点以下8位が最小の取引単位
ビットコインは0.00000001BTCが最小の取引単位です。デジタルのお金なので、1万円札や500円玉のようにキリのいい単位で取引する必要はなくて、細かい単位で取引できますし、お釣りを払ったりする必要もないです。ちなみに、最小単位の0.00000001BTCを、ビットコインの創設者のサトシ・ナカモトにちなみ、1 satoshiという単位で呼ぶ場合もあります。(1 satoshi = 0.00000001BTC)
私たちは、このような素晴らしい特徴をもったビットコインは「インターネットが生んだ新しいお金」と考えています。インターネットが出てきて、電子メールだったりLINEのようなメッセンジャーが使われるようになり、郵便で手紙を書いたりすることが無くなったように、古い仕組みの法定通貨(円、米ドル、、、)が将来使われることが無くなることもあるのではないか、と考えています。