「ビットコインの採掘マシンとは?その発展と歴史」にて、ビットコインの採掘マシンは、「1秒間に何回計算問題を解く出来るか?」で性能が決まると説明しました。
世の中に最初にAvalonによって市販されたASICの採掘マシンは1秒間に660億回の計算を行う採掘マシンでした。2024年現在、1秒間に100兆回以上の計算をするマシンが主力になっています。単純計算で、100兆回÷660億回=1,500倍以上の計算能力を持つことになります。これだけの性能の上昇があると、初代のASICをビットコインの採掘に投入しても、殆どビットコインの採掘できないどころか、電気代だけ支払うことになってしまいます。
大ヒットをしたBitmain社のAntminer S9は1秒間に14兆回の計算を行います。最近の主力の採掘マシンのは100兆回/秒の計算能力がありますので、S9の14兆回の7倍の計算能力があります。つまり、最新のマシンは大ヒットマシンのS9の7台分の能力があるということです。
採掘マシン名 |
メーカー |
計算能力 |
電力消費 |
Avalon 1 |
Avalon Project |
66GH/秒 |
600ワット |
Antminer S9 |
Bitmain |
14TH/秒 |
1,350ワット |
WhatsMiner M50 |
MicroBT |
114TH/秒 |
3,306ワット |
ビットコインの採掘マシンを買って、採掘を行った時に、どれくらい採掘ができるのか?事前に予測をすることが大事になりますが、その際に大事になってくるのが、「ハッシュレート」と「採掘難易度」という指標になります。
A. ハッシュレートとは
現在ビットコインの採掘に投入されている採掘マシンの計算能力の合計を「ハッシュレート」といいます。(個別の採掘マシンの計算能力も「ハッシュレート」と言うこともあります。)2024年9月2日現在のハッシュレートは「620EH/秒」です。これは毎秒622エクサ・ハッシュという単位になります。
1エクサ・ハッシュは1兆回(テラ・ハッシュ秒)の100万倍になります。「兆」の1万倍の単位の「京」という単位がありますが、1エクサ・ハッシュは100京回ということになります。622エクサ・ハッシュというのは、ビットコインの採掘機器全体が毎秒62,200京回の計算をしていることになります。
ハッシュレートとビットコインの価格の関係
ビットコインのマイニングは、ビットコインのネットワークの安全性を確保するために重要な役割を果たしています。私たちの採掘マシンを含めてビットコインのマイニングに投入される採掘マシンの全体の計算能力の合計であるハッシュレートは、ビットコインのネットワーク全体の健康度を示す重要な指標です。
ビットコインのハッシュレートの変動は、ビットコインのマイニングをする人たち(マイナー)がビットコインの将来に対して楽観的か否かのバロメーターとなります。ハッシュレートが増加するということは、マイナーたちが大量の資本とエネルギーを投入してビットコインのマイニングを行っていることを示しています。これは、マイナービットコインの価値に対して長期的な自信を持っている証とも言えるでしょう。
過去には、ハッシュレートが上昇した後にビットコインの価格も同様に上昇する傾向がありました。これは、マイニングに参加する人々がビットコインの価値に対してポジティブな見方をしており、その見方が市場全体に影響を与えて価格上昇を引き起こすというパターンを示しています。
ビットコインのハッシュレート(青線)とビットコイン価格(黒線、米ドル)
資料出所:Blockchain.com
ただし、このパターンは必ずしも一貫しているわけではなく、ハッシュレートとビットコインの価格が完全に連動するわけではありませんが、ハッシュレートの変動は確かにビットコインの市場に関する有益な情報を提供してくれるのです。
ハッシュレートとビットコインの価格のイメージを示した動画を見ていただくとイメージを持ってもらえるかと思います。
#Bitcoin price vs hashrate 😮👀 pic.twitter.com/XjmELdXOZR
— Bitcoin News (@BitcoinNewsCom) June 11, 2023
https://twitter.com/BitcoinNewsCom/status/1667871789957935105?s=20
B. 採掘困難度(マイニング・ディフィカルティ)とは?
「採掘困難度」とは、ビットコインを採掘するために必要な計算難易度を表す指標です。ハッシュレートが高いほど(ビットコインの採掘に投入されている採掘マシンの計算能力が大きいほど)、解くのが難しい計算を求められます。
採掘困難度の、ハッシュレートとの関係は、ビットコインのブロック生成(新しい取引データを保存したブロックを過去の取引を保存したブロックチェーンにつなぐ)間隔を一定に保つための調整システムによって結びついています。
具体的には、全体のハッシュレートが増えると(ビットコインの採掘に投入される採掘マシンの計算能力が増えるので)、新たなブロックが見つかる速度が速くなります。しかし、ビットコインは新たなブロック(取引情報を保存するブロック)が約10分間隔で生成されるように設計されているため、全体のハッシュレートが増えた場合、ブロックの生成速度が速まることを防ぐために、採掘困難度が上がります。
採掘困難度が上がる前と、上がった後で、仮に採掘に投入される採掘マシンの計算能力が同じだった場合、採掘困難度が上昇した後は、採掘の際の計算がもっと難しくなるため、解くための時間も、もっとかかることになります。このような仕組みで、ハッシュレートが上昇した時には、採掘困難度が上がることになり、新たなブロックの生成速度が再び10分間隔に戻ります。
逆に、全体のハッシュレートが減ると、新たなブロックが見つかる速度が遅くなります。この場合、ブロックの生成速度が遅くなることを防ぐために、採掘困難度が下がります。これにより新たなブロックの発見速度が再び10分間隔に戻ります。
このように、採掘困難度はビットコインネットワークが10分前後でブロックが生成されるように調整をする役割を果たします。
C. ハッシュレートや採掘困難度の上昇は採掘する人にはマイナス?
短期的にはマイニングの難易度が上がることは、一定の計算能力を持つマイナーにとっては報酬としてもらえるビットコインが減るという意味で、正直あまりうれしくないのは事実です。
ハッシュレートや採掘困難度が上がるということは、マイニングに投入する採掘マシンが増える、ということなので、ビットコインの発行量は一定(2024年9月現在は約10分ごとに3.125BTC)なので、競争相手が増える同じビットコインを得るための競争が激化して、もらえるビットコインの量が減ります。
しかし、長期的に考えると、悪いことばかりではないです。ハッシュレートと採掘困難度の上昇は、ネットワークのセキュリティが高まっていることを示します。これは、ビットコインの信頼性と安定性を高め、結果としてビットコイン自体の価値を上げる可能性があります。
また、「ハッシュレートとビットコインの価格の関係」でも説明したように、長期的には、ハッシュレートが上昇した後にビットコインの価格も同様に上昇する傾向があります。ハッシュレートが上昇しているということは、採掘をする人がビットコインの価格に強気である、とマーケットが捉えることが多いことから、ビットコインの価格を押し上げる一つのシグナルともなっていると言えます。
ハッシュレートと・採掘難易度とビットコインの価格のイメージ